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888億円を調達した北欧発、フードデリバリーの新星──ファンを惹きつける、愛情とテクノロジー by Forbes JAPAN CAREER


ここ数年で生活に溶け込んだ文化といえば、「フードデリバリー」は間違いなく上位に入るだろう。コロナ禍が追い風となり、日本でも都市部を中心に浸透。今や業界の勢力図は定まったかのように見える。

そんな中、「おもてなしデリバリー」を掲げ日本でじわじわとファンを増やしているプレーヤーがいる。鮮やかな水色のバッグがトレードマークのWolt(ウォルト)だ。

フィンランドで生まれ、現在23か国140都市以上でフードデリバリー事業を展開する同社は、2020年3月に広島に上陸した。日本では地方都市を中心に拡大し、同年10月に満を持して東京でサービスを開始。数年内に日本100都市での展開を目指しているという。

関東事業部の統括を務めるのは、2021年2月にジョインした安井春菜。なんと彼女の前職はUber Japan。Uber Eatsの立ち上げまもない時代に入社し、オペレーションチームのトップとして4年弱にわたり全国展開を推進してきた。

一度は制したフードデリバリーという山を、新たな道からもう一度登る選択をした安井は、業界の未来をどのように見据えているのだろうか。


愛情はスケールする──Wolt創業者からの衝撃的な言葉

「Uber Eatsでやるべき仕事はかなりやった。フードデリバリーという新しいサービスを日本に浸透させ、新しい働き方を広げてきた自負があります」

安井の言葉が健全な自信に満ち溢れているのは、それを裏付ける実績があるからだ。配達パートナーやユーザー、レストランの獲得、セールスサポート、アライアンスなどの多岐にわたる業務を推進し、Uber Eatsを26都道府県に広げてきた。日本における圧倒的なシェア獲得を牽引した実力者である。

「Uber Japanでやり切ったからこそ、次の挑戦の舞台を探していた」と話す安井。転職活動中にWoltの面接を受け、創業メンバーのミキ・クーシ最高経営責任者と話したとき、安井は衝撃を受けたという。

「業界では、ユーザーとのタッチポイントであるカスタマーサポートはコストセンターと考えるのが一般的です。しかしWoltは、それを投資領域と捉えてサービスを設計している。その姿勢に感銘を受けました。

短期的なスケールと効率性を追求する経営者がほとんどだと思うんです。その中でWoltは、ユーザーのエンゲージメントをいかに高めるかを突き詰めていて、同じ業界なのに一人だけ違うスポーツしてるみたいだなと思いました。それぐらい、Woltは他と違っていたんです」

読者の中には、フードデリバリーサービスを利用してがっかりした経験がある人はいないだろうか。「注文した商品がぐちゃぐちゃになって届いた」「問い合わせをしても会話が噛み合わない」「危うく道路で配達ドライバーと衝突しそうになった」......便利な反面、何かと問題点を指摘されることが多いサービスでもある。

一方、Woltのユーザーからそうしたクレームが上がるケースは極めて少ないそうだ。それどころか「Woltの対応に感動した」という声すらSNSには見られる。あるオーダーでは、誕生日の贈り物であることに気づいたWoltのカスタマーサポートのメンバーが配達パートナーに花束も買うように依頼し、誕生日のお客様に花束をプレゼントした。

「そういえば、ミキは面接でこんなことを言っていました」と安井。

“愛情って、スケールするんだよね”

他のプロ経営者から、こんな言葉は聞いたことがない。ミキは次世代の経営者だ──。安井はそう確信し、Woltの扉を叩いた。「今度は新しいアプローチでこの業界を成長させてみたい」という新しい希望を抱いて。

「配達料金99円」というロジックの裏に在る独自のテクノロジー

日本でフードデリバリーが最も浸透している東京は、Uber Eatsや出前館といった競合が強い地域でもある。関東事業部を統括する安井は、東京での勝ち筋をどこに見出しているのだろうか。

「東京は、Woltがサービス展開している都市の中でも特に先行プレーヤーが強いマーケットです。厳しい市場ではありますが、私たちはリピーター率を重視し、着実にファン層を積み上げる戦略でユーザーを獲得していきます」

ファンを増やす上で何よりも大切だと安井らが考えているもの。それがユーザータッチポイントだ。

「私たちは、配達パートナーは誰がどんな風にやってもいいとは決して思っていません。きちんとしたサービスマナーがある人かどうか確認をしています。また、カスタマーサポートは全て社員が対応しているので、「問い合わせたけれども話が噛み合わない」といった事態は起こりません」

これはユーザーだけではなく、レストランにとっても大きなメリットと言える。丹精込めて作った料理をきちんと届けてもらえないのでは、店の看板を汚されることにもなりかねない。お客様のことを本気で考えているレストランほど、料理をつくった“後”のことを気にかけるのは当然だろう。

Woltに他のアプリでは見られないような名店が名を連ねているのは、Woltがレストランに支持されている何よりの証と言える。

さらに、Woltを語る上で欠かせないのが、「99円」という破格の配送料。競合の多くは配送料を3〜400円に設定している中、なぜこれほどの低価格を実現できるのか?

「高い配達効率を実現する技術力に競合優位性があるからです。競合プレイヤーが多く生まれたアメリカやシンガポールなどは、経済格差が大きいのですが、Woltが生まれたフィンランドには、日本のように時給の高い労働者の割合が多い。そのため、配達技術に徹底的にこだわらなければビジネスが成立しなかったんだと、ミキは説明しています」

2014年の創業以来、Woltは8億5,600万ドル(約888億円)という巨額の投資を受けている。投資家から評価を得ているのは、高い技術力が可能にした優れたコスト構造があることが大きい。

ユーザーを大切にしているのは、単に聞こえがいいからではない。ビジネスを成長させるために最も有効な打ち手がユーザーエクスペリエンスの重視であることを、Woltは証明しようとしているのだ。


裁量は全てローカルに。常にユーザーにとっての“ベスト”を見つめる

「フィンランドの本社は、日本のユーザーやパートナーが求めていることを尊重した上で、私たちに判断を委ねてくれます。決してトップダウンではありません」と安井。

これまでサービス展開する都市としては100万人規模が最大だったWoltにとって、東京はまさに未知の領域。他国での成功事例がそのまま当てはまることの方が少ない中、安井らは自分たちの裁量で東京の攻略方法を考え、実行している。

そのフラットな関係性は、本社と日本の間だけではなく、日本のチーム内にも同じように成立しているという。まるで大好きなものについて話すように、安井が笑顔で語る。

「『上が決めた通りに動けばいい』と考える人は一人もいません。チームメンバーそれぞれにビジネスマインドがあって、みんなが『Woltにとって今一番大事なことは何か』を考え抜いている。社内のディスカッションは非常にレベルが高いです」

最後に、取材中ずっと頭に浮かんでいた問いを投げかけてみた。安井が今立ち向かっている競合には、自身が手塩にかけて育ててきたサービスも含まれている。自分が築き上げてきたものに挑む安井の原動力とは何なのだろうか?

「外に出てみると、改めて偉大な企業だと感じますね。それでもこの業界でもう一度挑戦する理由は、ユーザーにとってより良い世界があると信じているから。Woltのような考え方を持ってユーザーに向き合うプレイヤーが成長することで、業界全体の視座が上がるはずです」

今後さらに私たちの生活に浸透していくであろう、フードデリバリーサービス。誰もが100%安心安全に使えるレベルに達するには、乗り越えなければならない壁はまだまだ多い。

「みんなでより良いものに変えていける余地があると思っています」

澄んだ目でそう語った。たとえ自分の築いてきたものに挑まなくてはならなくても、ユーザーのためにやるべきことをやる。世の中に新しい豊かさをもたらすのは、彼女のような強さを持った人なのだろう。

文・一本麻衣 写真・小田駿一

Forbes Japan Career 
2021/03/31

【編集後記】

2020年、最も伸びた業界と言っても過言でない、フードデリバリー業界。
当然、私も何度も利用した。様々なサービスも試し、悲しい出来事も何度も経験した。

2021年、特定のサービスしか使わない自分がいた。
なぜそのサービスなのか、と聞かれると一言、「ホスピタリティ」と答える自分がいた。
便利さやスピードではない、自宅で心地よい体験ができることを求めているのだ。

そんな中、Woltの話を聞いた。パートナーやユーザーへの愛情、そして独自のテクノロジーによるスピードの担保。

期待しかない、正直そう思えた。
当然、後発のサービスである。一気に上位勢の牙城を崩すのは容易ではない。
ただ、期待したい。

これほど会社やサービスへの愛を嬉々として語る、リーダーならきっとやってくれるはずだ。

編集・後藤亮輔(Forbes JAPAN CAREER編集長)


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