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プログラミングは言語。文系理系と分けて考える必要はない(後編)

こんにちは、みんなのコードです。

みんなのコードは、「すべての子どもたちがプログラミングを楽しむ国をつくる」というミッションを掲げ、先生方が授業で使えるプログラミング教材『プログル』を提供しています。

小学校の算数・理科の時間で使える『プログル』、中学校・技術で使える『プログル技術』、そして今年3月には、高等学校情報科・情報Ⅰで使える『プログル情報』を提供開始しました。

これらの教材は、オンラインかつ無償でご利用いただけます。

さて、「高校生向けプログラミング教材を女性メンバーでレビューしてみて気づいたこと」と題して、『プログル情報』を実際に使ってみて女性メンバーが感じた心理的安全性の観点やプログラミングの面白さを感じるまでのプロセスを書きました。

今回は、この内容を高校教員研修を担当している講師・永野に共有してみた様子(後編)をお届けします!

前編はこちらです。
高校生向けプログラミング教材を女性メンバーでレビューして気づいたことを、元高校教員にぶつけてみた(前編)


前編では、「先生方にとっても、プログラミングを教えるハードルが少しでも下がればいい」とおっしゃっていました。

そうですね。それから、先生方の教えるプレッシャーというのはもちろんなんですけど、子どもたちの側にとっても、プログラミングが嫌いだとかやりたくないとなってしまうことがあると、それが一番まずいですよね。

結局、誰にでも得手不得手があるわけです。音楽にしたって運動にしたってね、いろいろあるわけですよね。でも、仮に苦手だったとしても、歌を歌うのすごい苦手だけど音楽を聴くのが大好きという人はいるし、運動は本当に苦手だったけどジョギングが趣味ですという人は大勢いるわけじゃないですか。

長い人生の中で本当に嫌いにならなければ、自分なりの楽しみ方はどんなものでも見つけられると思うんです。でも、もう二度と見たくない、関わりたくない、となってしまうと、楽しみを見いだすという選択肢自体がなくなってしまう。だから、まずは面白いんだなとか、苦手ではあるかもしれないけど、拒絶してしまうことにならいように、少しでも楽しい部分を感じさせるのが一番大事だと思うんです。もちろん、成績をつけなければいけないということはあるんですけど(笑)。

子どもたちの選択肢を広げるのが教員の仕事だから、そこを塞いでしまうことは一番やっちゃいけない。気をつけたいなと思いますよね。


-『プログル情報』はドリル型教材ですが、面白い、を伝えるにはどうしたらいいのでしょうか。

『プログル情報』だけで実現するのは難しいと思います。はっきり言って。『プログル情報』は入り口にすぎないから。面白い、につながるためには基礎の練習はどうしてもやらなきゃいけない。『プログル情報』はそのための教材ですよね。

先生方にも、『プログル情報』で終わりにしないでほしいなと思います。『プログル情報』はドリル型の教材なので、レッスンをひとつずつクリアさせて、終わったらそれで成績をつけて、はい終了。となってしまうと、生徒はあまり面白みも感じないし、単なる問題集を進めていくのと変わらなくなってしまいます。プログラミングを学校で学ぶ目的はそれだけではない、ということは言いたいですよね。ドリル型教材を提供してはいるけれど、そこがゴールじゃないんですよ、ということをね。


-基礎の練習をした上で、自分たちなりの何か作品を作るということを、生徒に体験してもらうことが大切なんですね。

それから、あとひとつ思ったんだけど。先ほど(前編では)、子どもたちがわいわい教え合える時間もタイミング良く混ぜるのがいいという話をしたけれど、「教えあい」のやり方にも気を配った方がいいですね。子どもたちは教えることに慣れていないから、つい答えを教えてしまうんですよ。


-たしかに(笑)

そうなってしまっては、いくら教え合っても意味がない。ドリル型教材は、どうしても、スピード競技になってしまうところがありますよね。子どもたちに、教え方を教えることがすごく大事なことではないかと思います。友だちに、スピードを重視して直接答えを教えるのではなく、なぜこうだと思う?とか、これをやったらどうなる?とか、生徒同士でも問いかけながらアドバイスをするということがとても大事なんだと思います。子ども同士で教えていると、つい単純に答えを教え合ってしまう。


-めっちゃそれやってました。学生時代を思い返すと、友だちはいろいろ教えようとしてくれるんだけど、「で、結論は?」と、答えを聞く会話になってしまってました(笑)

実際、考えながら教え合うことはものすごい学びになる。教える側にとってもね。基礎の部分をきちんとやると、急がば回れではないですけれど、そこをじっくりやると、やっぱり定着率とか応用力は全然違ってきますよね。


-基礎の定着という点では、反復することが大切だと思いました。私たち自身、3回やり直してようやく面白さが実感できたので(笑)。ドリル型教材だと、反復よりもレッスンを前に進めることが重視されているのかなと思うのですが。

そこも、先生のやり方ですよね。『ブログル情報』でお終いにしないということが大切なんですよね。

ドリル型教材は、みんなで一緒に進めようとすると、すぐ出来た子どもたちは暇にしてるんですよ。こんな簡単なことまわりの人はまだ終わないのかな、なんて。そういう子には、ここをこう変えてみたらどうなる?とか、別の計算式や文字列を入れたらどうなる?とか声をかけると、いろいろやり出す。そこで反復にもなるし応用にもつながるから。いったん全部消して自分で書いてみようか、とか。一から自分で書いてみると、実は全然覚えていなかった、というのが自分で分かりますよね。

プログラミングに限らないけども、子どもたちの進度の差というのはやっぱりすごいわけですよ。どんな教科でも。教室の様子を見ながらそこをうまく吸収していくことは大事ですよね。


-少し話は変わって、『プログル情報』は文理選択前に使われることが多いと思うのですが、特に女の子が理系を選ばない理由になったら嫌だよね、という話も出ました。

そうだよね。一方で、私は、プログラミングって理系なのかなと思うんですよ。むしろ文系なのではないかと思う。言語だから。数学はたしかに理系だけど、プログラミングは言語だから、文系の人が得意ということもあると思うんです。理系は男子、文系は女子が得意、なんていう考えもありますけど、私自身、女子はプログラミングが苦手とは高校現場では思っていなかったです。むしろ得意な子もたくさんいたんです。

高校では課題研究という授業で、テーマを決めて1年間かけて取り組むということをやったんです。オリジナルの iPhoneアプリをプログラミング言語 Swift で作った子がいた。この作品は生徒2人でプログラムしたんですけど2人とも女の子でしたからね。

さらに、これからの時代、プログラミングは文系だ理系だ、という感覚自体がなくなっていくのかなと思っています。


-そのメッセージ、すごく大切ですね。プログラミングは理系のものと決めつけない。小学校段階で理科や算数と結びつけられてプログラミングの事例が提示された、理系と結びつけられてしまう、という話を聞いたことがあります。

それはありますよね。小学校で、絵本と結びつけてプログラムをつくる、デジタル絵本作りのようなという課題をやると、女の子はほんとうに良い作品をつくってきますよ。文脈を考えたり、いろいろな内容を順序だてて考えるということは、コミュニケーション能力にすごく重要だと思うけど、プログラミングもそれにすごい近いところあるんですよね。


-現代文みたいなかんじですね。

そう。だから、女子はプログラミングが苦手ってことはないと思うんですよ。

それから、男女という性別の話もそうだけど、プロかプロじゃないとか、プログラミングを仕事にするしないということもあると思います。

これまでは、プログラムはプログラマーがやること、という偏見があったんだけど、これからはそうではなくなっていくんだろうなと思いますよね。誰にでもだんだん身近になるものだと思ってるんですよね。

思い返せば、昔は、パソコンだって一部の人しか使ってなかったんですよ。いまは誰でも使う。エクセルひとつ取ってみても、家計簿とかちょっとしたことであればすごい簡単につくれるし、年賀状だって手書きで書いていた宛名を誰もがパソコンを使っている。誰でも簡単に使って、日常の生活に取り入れている。結構便利だなって、それが仕事かどうかに関わらず、普通の道具として使ってるわけですよ。ソフトウェアもこういった変遷があったので、プログラミングもそういうふうになると思うんですね。

どの言語がどうということはあまり関係なくって、それこそ小学校段階のプログラミング的思考(※)のように、そういう感覚がちゃんとあればできると思うんですよね。仕事にするしないではなく、生活の中で普通に取り入れる。

そうだなぁ。例えば、 iPhone にショートカットというアプリがあるの、知ってます?


-使ってないですが、ありますね(笑)

このアプリは、まさにプログラミング的思考なんですよ。いろいろ自動化するんです。iPhoneのアプリや機能を連携させることができる。

日常の生活の中で、ちょっとした楽をする目的で使えてしまうんです。プログラミングをするモチベーションはなんでもいいんだと思います。「便利」「おもしろい」「楽になる」でも、なんでもいい。でも、何かしら役に立つとか、自分に関係してることだと気づくことが大事ですよね。これはどんな勉強でも同じだけれど、私はいったい何のためにこんな勉強してるんだろう、となってしまうのが、全ての学習の一番のハードルだから。物事を学ぶ上では、自分にも関係するとか、役に立つんだという実感をさせるというのが、とっても大事なことなんです。

ひとつ思いつく事例は、筑波大学の履修システムが止まってしまって、新入生が代わりとなるシステムをつくった話、見ましたか?


-Twitterで見ました!

この間まで高校生だった新入生が、自分の大学のトラブルを、自分が何とかしようと言って3時間くらいで作ったらしいんです。夜10時に思いついて、夜中の1時に出来たんですって。すぐにTwitter で拡散されて同級生たちが助かった。

まさに、プロではない人が自分の特技で活かせることを身の回りの人たちのために使った。時代だなと思いましたよね。象徴的だなと思いました。


-『プログル情報』の次段階、楽しい!面白い!にたどりつく教材をつくりたいですね。

まさに。そこがまた、みんなのコードがこれから実現したい「コンピュータの教科化」につながってくるわけですよ。

2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されたと言っても、専用で学ぶ時間を確保できなかったので、算数と理科と結びつけた事例を提示しつつ、今の教科と総合的な学習の時間内でやりましょうとなってしまったわけです。それはね、はっきり言ってなかなか難しいんです。

算数と理科は、単元のねらいとプログラミング的思考との相性という点でもちゃんと両立していると思いますよね。素晴らしい例示だと思います。

一方、プログラミング的思考を含む授業を国語や社会の時間でやろうとすると、この単元のねらいを達成するために、なぜプログラミングでやらなきゃいけないの?という意見が必ず出てくる。

逆に、プログラミング的思考を重視すると、単元のねらいを十分達成できていない、プログラミングすること自体がねらいになってしまっている、と言われたりね。既存の時間で、教科学習とプログラミング的思考をバランスとって上手くやるというのは相当な難しさだと思います。

いろいろなプログラムをつくって、面白いな、楽しいな、もっと作ってみたいというような、純粋にプログラミングを楽しみながら学ぶ時間が必要だと思うんです。それがいまは時間がなくてなかなかできない。子どもたちがもっと純粋にプログラミングに向き合える時間が必要だと思います。

だから、独立したコンピュータという教科の中で、特別な理由をつけなくてもプログラミングに触れられる時間が欲しい。そのために、みんなのコードで貢献していきたいと思いますよね。


-みんなのコードがこれから実現していきたいことにまでつながり、すごくワクワクしました。永野さん、私たちの意見を受け止めていただき、ありがとうございました。


みんなのコードでは、ダイバーシティ&インクルージョンの観点を意識したプログラミング教材の開発に取り組み始めています。


(※)プログラミング的思考とは
「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組み合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組み合わせをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力」のこと
(文部科学省資料より引用)


インタビュアー:杉之原明子、洞まなみ、釜野由里佳

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