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【商社→ハーバードMBA→投資ファンドVP】30代後半、自分の人生をかけてチャレンジしたい場所

東大大学院を卒業後、三菱商事にて自動車事業の海外展開などに従事し、Harvard Business School にてMBAを取得。外資投資ファンドのカーライルグループでヴァイス・プレジデント まで務めた芳賀さんが、40を手前に製造業スタートアップにジョインを決めた背景とは?

ビジネスは1+1=2の世界じゃない

――よろしくお願いします!芳賀さんは元々エンジニア志望だったんですよね。新卒で三菱商事に入社したのはなぜですか?

学生時代は数学と物理が好きで、東大で航空宇宙工学を学んでいました。その流れでエンジニアを目指していたのですが、よくよく自分の興味が向く先を考えると少し違うな、と。

エンジニアは一つのことを深掘りするスペシャリストですが、私自身はどちらかというと物事を俯瞰的に広く見ていくことが好きなタイプで、仕組みそのものよりもそれがどう現実の世界で活用されていくのかに興味があったんですよね。

ちなみに卒論のテーマは「(脳の神経回路の一部を模した)ニューラルネットワークを利用した航空機の自動操縦」。これはいまで言う「AIを使ってドローンを飛ばす」イメージです。

ずっとテクノロジーが好きで、経営者のように全体感を持った視野と、幅広い知見でテクノロジーを世に出すことができたら面白いだろうなと思っていました。

三菱商事のような商社はビジネスを作り出していく場。グローバルに業界を横断した視点を持ってビジネスの基本を学びたいと考えたんです。

最初に配属されたのは自動車事業本部。航空宇宙分野よりも規制がなく、機械系で一般消費者に商品展開するようなビジネスに携わりたいと思っていたので、まさにドンピシャでした。

――三菱商事では、どのような仕事を?

最初の4年間は大手自動車メーカーの自動車を輸出販売する貿易業務の中国部門を担当していました。現地で販売会社を立ち上げたり、メーカーさんと一緒に製造会社をつくったり。投資した会社には三菱商事から経営陣に加わるメンバーを送り、私は本社側の立場で事業戦略を考え提案していたんです。

その後、管理部門に異動して、自動車事業本部が推進したいビジネスの投資審査に従事し、最後の1年間は、また自動車事業本部に戻りインドネシアを担当。

中国は市場が急拡大していくなかでいかにビジネスを伸ばすかという仕事でしたが、インドネシアはすでに約40年のオペレーション実績があり業界トップのシェアを如何に維持・拡大していくか。中国同様に経済は成長している中で、現場の経営陣やメーカーさんと一緒になって事業拡大戦略を立案・推進するとても面白い仕事でした。

――国の経済に入り込むような仕事ですね。その中で成果を出すために重要なことは何でしょうか?

結局は「現場」と「コミュニケーション」じゃないかなと思います。

紙に書いてあることだけじゃ、現場で何が起きてるか、何が問題か、なんて全くわからないんですよね。国をまたげば前提としていることも異なるし尚更です。過去にコミュニケーションの齟齬で誤解を生み揉めてしまったこともありました。

だからこそ私は、立場に関わらず現場に行くことをすごく大事にしています。例えばディーラーに話を聞きに行くと、現場の臨場感がわかるんですよ。どういう人が、どういう表情で自社の自動車を販売しているのか。そういう経験の積み重ねで、現場の人とリアルにコミュニケーションをとる重要性を実感していきました。

どんな仕事も人と人が関わって成り立っていますからね。ビジネスは1+1=2の世界じゃなくてもっと複雑。修羅場もありましたが失敗の一つひとつを通して、コミュニケーションの大切さを学んだ気がします。

最初、ファンドにいいイメージはなかった

――その後、ビジネススクールに通っていたそうですね。

三菱商事では多くを学びました。けれどだんだん自分が商社で得た知見を外の世界で体系的に学び、より広い視点を身につけたいと思うようになったのでハーバード・ビジネス・スクールに留学し、MBAを取得することを決めました。

経営の知識やリーダーシップ、マーケティング、オペレーション、会計などをひと通り学びました。起業の方法論に関する授業も集中的に受講し、途中で2ヶ月ほど、マッキンゼーのインターンシップに参加したことも。実際に大手企業の戦略づくりを経験できました。

スクールの卒業を控え、今後どうしようかと考えたとき、マッキンゼーでコンサルタントの仕事を経験してみて、やっぱり私は現場に立って仕事がしたいな、と。

三菱商事では、自分たちで事業を持ち、経営管理から意思決定、戦略を決めて実行することまでやっていました。対してコンサルタントはアドバイザーだなと思って。

三菱商事に戻って新しいことをやろうかとも思ったのですが、ちょうどそのとき出会った投資ファンドのリクルーターの話を聞いて考えを変えました。

――2社目に投資ファンドのカーライルを選んだのですね。

と言っても、実はもともと投資ファンドに対してあまりいいイメージを持っていなかったんですよ。投資して金融的にリターンを得ている、ある種強欲な人たちだと思っていました(笑)。

けれど実際は「日本の価値ある中堅会社に投資し、売上・利益を上げることで企業価値を大きくしている」と知ってイメージがかなり変わったんです。

実際に投資している企業名を聞いたら、日本を支える本当にいい会社ばかり。いい会社をさらにいい会社にするお手伝いをするのが、カーライルという投資ファンドなのだと理解しました。

カーライルでは、投資検討・実行から、バリューアップ、売却、という投資ファンドの一連の業務すべてに携わってきました。2019年からはヴァイス・プレジデントとしてカーライル・グループを中堅社員の立場から牽引していく役も担いました。

製造系やテクノロジー、ヘルスケア、コンシューマーなど本当に様々な会社に投資し、その過程でビジネススクールで学んだことを利用しながら、投資先の社外取締役として投資先企業の成長に寄与するなど、さらに力をつけられたのは本当に面白い経験でしたね。

ルーツである製造業に、いまこそ人生をかけたい

――カーライルからキャディに転職した理由を教えてください。

ファンドの仕事を通して投資先企業の成長に寄与している実感もあり、やりがいのある仕事でしたし、日本経済の活性化の観点からも今でも意義深い仕事だと思っています。

しかし自分も30代後半になり、思い切ったチャレンジがしたいと思ったんです。仕事がら、業界の様々な経営者の方と会う機会が多かったのですが、1年半くらい前に、友人から「面白い会社があるから話をしてみたら」と代表の加藤さんを紹介されて。

キャディという会社が、日本の伝統的な巨大産業である製造業において、構造的な負を解消しようとしていると知りました。

ものすごいインパクトと成長可能性があって面白い。自分の人生をかける価値があると思い、ぜひチャレンジしてみたいと胸が熱くなりましたね。

ーー日本の経済に対する危機感みたいなものもあったんでしょうか?

そうですね。アメリカではスタートアップがどんどん台頭しているのに、日本はこういう企業がまだまだ足りていないな、と。

きっとスタートアップが、今後の日本経済活性化において大きな存在になる。ならばそこに身を置いて力を発揮したいという気持ちがどんどん強くなっていきました。

グローバルにはテクノロジーによって高い成長(グロース)を実現する企業が年々増えていますし、高い企業価値評価を受けて上場もしています。テクノロジーは全産業に波及し始めていますが、製造業においてはまだまだです。

そこの変革に投資家ではなく事業家として関わりたい。そうすれば10年後には全く違う価値観でビジネスと向き合えそうだし、世の中を変えていく当事者であり続けられます。

ーー製造業は芳賀さん自身のバックグラウンドにも関係しているとか?

もともと私のルーツは製造業にあるんです。父も叔父も自動車会社に勤めていたし、私自身も出身は工学部。初めて立ったビジネスの現場は自動車業界でした。知らない間に「製造業をよくしていきたい」という気持ちが、私の中で育っていたのかもしれません。

加藤さんと話せば話すほとキャディに魅力を感じましたし、加藤さん自身が持つ経営者としての思想や価値観にも共感しました。すごく芯があって、これだけ物事の本質を捉えて正面から解決していこうとする経営者は稀有です。

ほかの経営チームの人たちとも話してみたら、皆さん優秀でピュア。この人たちとなら、製造業に横たわる難しい問題でも時間をかけて取り組む価値があると思いました。一緒に高い山に登りたい、たとえ登りきれなくても後悔しないな、と

――芳賀さんはこの4月から社長室長としてジョイン。いまの気持ちを教えてください。

キャディが1年後や3年後にどうなっているかは、おそらく誰にもわかりません。5ヶ月後だってわからないかもしれない。何しろ登っている山が大きいし、製造業にはできることがたくさんあります。

もちろん事業計画はありますが、自分のやりようでいくらでも変わると思うので、どこまでできるようになっているかは未知数です。そういう「作り上げていく」フェーズにいることはとてもワクワクします。

日本では、高度経済成長を経てバブルが弾けたあとを「失われた30年」と表現しています。これって「もっと日本という国が成長しなければいけない」ということだと思うんです。新しい種が芽吹く環境であり続けないと、国はいつか必ず弱小化します。

既存の巨大産業の抜本的な改革に挑戦するスタートアップの現場、最前線で自分に何ができるのか。社長室長として求められている役割は、ファイナンス周り全般と事業を作り出すことだと思っています。スタートアップでの事業作りの経験はありませんが、これまでの経験を存分に活かしつつ、思考を止めずに前に進み続けたいですね。

――では最後に、今後どんな人と働きたいですか?

キャディが挑戦している課題に、ワクワクしてくれる人であることが一番大事だと思っています。特別なスキルは求めませんが、全てにおいて責任感を持って投げ出さずにやり切ってほしいです。歯を食いしばってやる心意気があれば、何でも乗り切れるのではないでしょうか。

あとたぶん私と同世代で、転職しようか悩んでいる人はほかにもいると思うんです。そういう方に対して言いたいのは「みんなでチャレンジしましょう」ということ。

それがキャディのようなスタートアップでなくてもいいんです。ワクワクする、世の中の役に立つと心から思えることが目の前にあるなら、ぜひ飛び込んでいってほしいなと思います。

30代後半、まだまだ新たな舵きりができる年齢です。ぜひ互いに刺激しあって一緒に頑張りましょう!

Photo by Taiga Yamazaki

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