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私たちは何のために「働く」のか?【経営日記 バックナンバー Vol.3】

こんにちは!「はなみち」こと代表の原口瑛子です。

振り返ってみると、前回の「経営日記」を書いたのが、8月下旬。まさに、光陰矢の如し。あっという間に3ヶ月が過ぎていました。

この3ヶ月、数え切れないほどの多くのことがありましたが、その中でも私にとって最大のイベントだったのは、10月初旬にビジレザメンバーと行った「バングラデシュスタディーツアー(Bangladesh Study Tour)」、通称「BST」です!(と勝手に私が呼んでいます)。

今回は、そのBSTを振り返りながら、「私たちは何のために「働く」のか?」というテーマで、ブログを綴りたいと思います。

突然ですが、あなたは何のために働いていますか?

期間限定店「博多アミュエスト店

「BST」の背景

2014年に始まったビジレザは、2015年に初の直営店舗である天神店をオープン。その後、難波店川崎店品川店熊本店梅田店名古屋店梅田店広島空港店と、全国8店舗にまでに拡大しました。

実は、その1店舗目である天神店がオープンした頃から、店舗メンバーとの間でこんな約束が交わされました。

「自分達の店舗の利益で、初期投資が回収できたら、みんなでバングラに行く!」

店舗のメンバーは、バングラのメンバーが作った商品を、毎日心を込めてたくさんのお客さまに届けてくれました。彼ら/彼女らが、「ビジレザの顔」として、最前線で頑張ってくれたからこそ、バングラの仲間達を増やし続けることができたと言っても過言ではありません。そして、彼ら/彼女らの努力のおかげで、どの店舗も早期に、初期投資を回収することができました。

ですが、この約束…。長い間、果たすことができませんでした。その最大の理由は、バングラの治安が安定していなかったから。

最も大きな出来事だったのは、2016年7月に起きた「ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件」でした。

当時、私は生産/品質管理のサポートのために、バングラの工場で働いていたのですが、その事件で狙われたのが、日本人などの外国人だったということもあり、私を含めた日本人メンバーは、事件直後に日本に緊急帰国することになりました。

その事件以降、私はバングラに戻ることができず、またビジレザとしては、「メンバーと一緒にバングラに行く」という店舗のメンバーとの約束を果たすことがなかなかできませんでした。当然ですが、メンバーの命が最も大切。絶対に、メンバーを危険な目に合わせるわけにはいきません。

そうして時は経ち、2017年も後半…。
ようやくバングラの治安も安定したため、ついにみんなとの約束を果たすことができました!

今回のメンバーは、全部で19人!ほとんどのメンバーが、初のバングラ。店舗からは、川崎店社長さっちゃん(初)、品川店社長エリーナ(初)、熊本店社長ローリー(初)、梅田店社長うえさん(初)、名古屋店社長オカダ(初)が参加。福岡オフィスからは、私はなみちゆかちほ(初)、あやの(初)、店舗三銃士のよっさん(初)・まこっちゃん(初)・まーみん(初)、新規開発のきんちゃん(初)・すわっち(初)・きょん(初)、新卒のアース(初)、ゴン(初)、そしてファシリテーターとしてチャーリー(初)。久しぶりのバングラということでボーダレス代表取締役田口(ボス)も一緒に。

福岡空港にて

「BST」の目的とは?

バングラへの出発前、ファシリテーターであるチャーリーとともに、このBSTの目的を三つ設定しました。

一つ目は、ビジレザの事業の目的を、より深く理解すること。
二つ目は、バングラデシュという国を、より深く理解すること。
三つ目は、メンバーとの交流を通して、仲間のことを、より深く理解すること。

私が最も大切だと考えていたのは、一つ目の「事業の目的を理解する」ということでした。

ビジレザは、「バングラデシュの雇用を増やすため」に始まった事業。アジア最貧国の一つと言われるバングラでは、貧しい家庭環境の人々も多く、働いた経験がない、あるいは教育を受けていないという理由から、働きたくても働くことが難しい人々が多く存在しています。

シングルマザーなどの女性や、障害を持っている人々は、特に他の工場では採用されにくく、さらに採用された場合も労働差別を受けやすいという課題があります。ビジレザの商品を生産しているバングラの工場では、そういった厳しい境遇で生きる人々を積極的に正社員として採用し、その本人、そしてその家族の生活を支えていきたいと考えています。

この「事業の目的」こそが、通常のビジネスとは違うこと。
最前線で働く店舗メンバーにも、実際の目で見て、感じて、より深く理解してほしい。
バングラで見た光景が、みんなの共通認識・共通言語となる、そんなBSTにしたい。そう決めて、いざバングラへ。

修学旅行並みにはしゃぐメンバー

バングラの仲間たちが待っていた!

ダッカから車で約40分。アシュリアという地域に、ビジレザの工場があります。今年の夏、これまで稼働していた工場では、生産キャパが追い付かず、またメンバーも入りきれなくなってしまったため、約1,000人が働くことができる新工場に移転しました。

その工場にもうすぐ到着…というところで、急に季節外れの大雨が降ってきました!「困ったなー」と思いながら、車から外の風景を見ていると、何やら工場へと続く長い長い行列が…。

車を降りてよくよく見てみると、なんと約800人のメンバーたちが、土砂降りの中で私達の到着を待ってくれていたのです!

大雨の中で待ってくれていたバングラのメンバー達

バングラメンバーの粋な歓迎に、日本のビジレザメンバー達は大感激…。感動しすぎて、みんな大号泣でした。

そんな大号泣を笑顔で迎えてくれたバングラのメンバー達

「事業の目的」を知る

工場に入ると、マネジメントチームのメンバーとの交流がスタート。現在工場で働くラインメンバー約800名を率いているのが、このマネジメントチームのメンバーです。

マネジメントチームとともに

そのマネジメントチームのメンバーに、工場の生産ラインを案内してもらいました。店舗メンバーにとって、実際の生産工程を見るのは初めてのこと。毎日店頭で販売している商品が、想像以上に多くの工程と時間をかけて、一つの形になっているということが、店舗メンバーにとっては非常に印象的だったよう。

ラインメンバーの一人

生産工程を見ながら、ラインメンバーに話を聞きました。「この工場で働き始めたきっかけは?」「ここで働き始めて何が変わった?」「あなたの夢は何?」

足に障害のあるメンバーからの答え。
「障害があるから、他の工場では雇ってくれなかった。だけど、この工場では雇ってくれて、座って仕事ができるようにしてくれる。メンバーも家族のように接してくれるから、とても感謝している。」

出産後、旦那さんに逃げられ、シングルマザーになったメンバーからの答え。
「今まで働いたことがなかったから、他の工場では面接さえしてくれなかった。だけど、この工場では自分の家庭の状況を聞いてくれて、雇ってくれた。今は、子どもにご飯を食べさせることができる。これからは、子どもの将来のためにお金を貯めていきたい。」

他の工場で働いていた女性のメンバーからの答え。
「他の工場では、セクハラや労働差別があったけど、この工場では一切なくて、安心して働くことができる。将来自分の子どももここで働いて欲しい。」

メンバーの言葉を聞きながら、改めてビジレザの「事業の目的」を実感していきました。

「バングラ」という国を知る

今回のBSTでは、バングラのことをより深く知るために、革の鞣し工場にも見学に。

「バングラ」で「革」というと必ず出てくるワードが、「ハザリバーグ」という場所。1970年代から、鞣し工場などの革の加工工場が集まっている地域ですが、排水処理が未整備で、鞣しの過程で使用される化学物質がそのまま川に流れ出るなどの環境汚染や、労働者の健康被害、児童労働などの問題が、メディアなどで報道されていた地域です。

数年前からバングラ政府は立退勧告を出しており、現在は多くの鞣し工場が移転されています。今回は、その移転された先の工場を見学に。ちなみに、ビジレザの革も、移転された先の鞣し工場から革を調達しています。その鞣し工場では、環境汚染や労働問題などの改善が進んでおり、ビジレザもお客さまに安心して商品をお届けできることを再確認しました。

鞣し工場にて

その他、ダッカにあるフリースクールにも見学にいきました。教育費が払えない貧しい家庭の子ども達が無料で学ぶことができる学校です。スタッフの方々に話を聞くと、バングラでは子ども達は幼い頃から「働き手」と捉えられ、特に女の子は「学校に行かせるよりも、早く結婚させた方が良い」と考える貧しい家庭も多く存在するとのこと。

「これらの社会問題に対して、私たちに何ができるのだろうか?」

バングラにある様々な社会問題に触れることで、ビジレザがアプローチする「雇用創出」という視点だけでなく、「これからの私たちに何ができるのだろうか?」とより広い視点でメンバーと意見交換をすることができました。

イラストを書いて大人気の梅田店社長の上さん

ビジレザが始まった当初から、「雇用創出」はバングラの社会問題を解決する、ファーストステップだと考えています。工場は、彼らに働く場を提供するだけでなく、住居や教育・医療サービスなど備えた「ボーダレスビレッジ」を作り、他の工場のロールモデルとなる工場を目指しています。工場がスタートして約3年。少しずつその取り組みが始まっています。

例えば、バングラの新工場ではこれまでの工場にはなかった、ドクタールームが完備されていました。ラインメンバーの多くは、これまで貧しい環境で暮らしていたため、慢性的に栄養が不足しているメンバーも多く、猛暑の時期には熱中症などで倒れるメンバーも多くいます。そんなときのためのドクタールームです。

そして、念願のキッズルームも準備中でした。工場のメンバーは、6割が女性。子どもがいるメンバーも多いため、彼女らの子ども達を預けることができるように作られたこのキッズルーム。年内にはスタートする予定で、子どもと預けたいと手を挙げているメンバーがとても多いとか。

実は、こういった労働環境が整備されている工場は、周辺の工場にはあまり多くありません。

労働環境を整え、周辺地域の工場、そしてバングラ内の工場のロールモデルになること。これが、バングラの工場のメンバー達が目指している未来です。

年内にスタートするキッズルーム(詳細は近日公開!)

「メンバー」を知る

工場見学の2日目は、実際に店舗のメンバーも、一つの商品を作ってみることになりました。見ていた時には、簡単に思えた生産工程。でも実際の自分で作ってみると…これが実はとても難しい!実際に自分の手で作ることで、商品をより深く理解することができました。

裁断をするよっさん

ヘリ漉きをするまこっちゃん

悪戦苦闘しながら、ようやく一つの商品が完成しました!もはや、感動レベル。この商品づくりを通して、ラインのメンバーの高い技術やものづくりへのこだわりを知った店舗メンバー達。こういったバングラメンバーとの交流を経て、少しずつお互いの理解が深まってきました。

出来上がった商品を見て大喜びのメンバー

ちなみに、私たちの滞在期間中、バングラメンバー達は、ずっと私たちに付き添い、様々なサポートをしてくれました。夜遅くに空港に迎えに来てくれたメンバー。道を歩く時にさり気なくサポートしてくれたメンバー。工程を一生懸命伝えてくれたメンバー。言葉は通じないけど、いつも笑ってくれていたメンバー。

たった3日間の滞在ではありましたが、ここでは到底書ききれないほどに、お互いのことを知ることができた時間でした。

私たちは何のために「働く」のか?

社会人になると、人は一日の多くの時間を、働いて過ごしています。私たちは、一体何のために働いているのでしょうか?
私は、ボーダレス・ジャパンで働き始めて、明確に答えることができるようになりました。

それは、「社会問題を解決するため」
ビジレザにおいては、「バングラデシュの雇用を増やすため」。

正直、お金も地位も興味はありません。そう言うと、「何を綺麗事を」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当です。そんなことよりも、「社会に対してどんなインパクトを残していけるのか?」 つまり「ソーシャルインパクト」こそが、私にとっては重要。

貧しい家庭環境の人々、働いた経験がない、あるいは教育を受けていない、という理由から、働きたくても働くことが難しい人々。そういう人々が、夢や誇りを持って働くことができる場を作ること。そして、それを世界中に広げること。

そういう社会を作るために、自分の命を使いたいと思っています。

バングラの工場の様子

今回ビジレザのみんなと行ったBSTを通して、本当に多くの学びがありました。

「事業の目的」を達成するために、今の私たちはどんなアクションを起こすべきなのか?帰りの空港では、今回参加したメンバーひとりひとりが、自分のアクションプランを設定し、みんなの前で発表することにしました。

私自身は、このBSTを通して、一つ決めたことがあります。それは、ビジレザで「働く」みんなが、同じ目的を持って、同じ方向に向かって走ることができるように、この「BST」を定期的に開催するということ。早速、2017年11月に「BST第2回」(了)、2018年1月「BST第3回」、2018年2月「BST第4回」が開催することが決定しました。

明確な目的があれば、走る方向が決まり、努力の矛先が決まる。
明確な目標があれば、目標と今の自分との距離が分かり、必要な努力の量が決まる。

ソーシャルインパクトを考えると、まだまだビジレザは発展途上です。だからこそ、事業の「目的」を見失わずに、しっかりと地に足をつけて、走り続けたいと考えています。

世界中の「働く」人々の明るい未来をつくれるように。

BSTを経て自分のアクションプランを発表@空港

※この記事は、2017年12月11日にリリースされたものです。

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