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地下鉄路線図のフォントサイズのルールは何?知られざる路線図の世界

CHAPTER #1

複雑に入り組む東京の路線 路線図のデザインはどうなっている?

こんにちは、A.C.O. Journal編集部です。突然ですが、私は地下鉄の路線図が大好きです。部屋には路線図のポスターが貼ってありますし、東京の路線が全て網羅されているクリアファイルを愛用中です。最近欲しくてたまらないのはガチャガチャの「東京地下鉄立体路線図」です。

東京の地下鉄は世界的にも複雑に入り組んでいることで有名です。私は東京の地下鉄の複雑さに慣れず、よく迷っておりました。乗り換え案内のアプリは行き先を教えてはくれますが、土地勘を覚えることはできません。またアプリはスマートフォンを持っていることが前提ですよね。

どこの駅にも掲示されている路線図は複雑な情報がわかりやすくデザインされ、電車に乗る多くの人々に利用されています。そのため、路線図からはさまざまな情報を得ることができます。 たとえば、「渋谷駅には銀座線と半蔵門線と副都心線とJRと東急線が通っている」「赤坂見附駅と永田町駅は地下で移動ができる」「JR御茶ノ水駅と地下鉄の御茶ノ水駅は駅名は同じだけど、場所は離れている」などといった情報が、1枚の図の中に集約されているのです。

これって当たり前に思えてすごいことだと思いませんか?そんなことを考えながら電車内の路線図を眺めていて起きていたのに電車を乗り過ごしたことがあります。 本記事では路線図が大好きな木下が、路線図のすごさについて話します。



CHAPTER #2

意外と知られていない!東京メトロの路線図のルール

まずは東京メトロの路線図についてです。現在の東京メトロの路線図は2003年にリニューアルされたもので、東京メトロとぴあ株式会社が共同開発したものです。東京メトロの路線図をみていると、多くのデザイン上のルールがあることに気がつきました。まず、東京メトロの路線図では駅名の大きさが4段階にわかれています。

①最も大きいサイズ(銀座駅、大手町駅、霞ヶ関駅、表参道駅など)東京メトロの路線が2路線以上乗り入れる駅 ※その中でもさらに東京駅、新宿駅、渋谷駅、池袋駅、上野駅のターミナル駅はサイズが大きいかつ、地の色が若干黄色っぽくなっています。

②2番目に大きいサイズ(恵比寿駅、目黒駅、六本木駅、新橋駅、浅草駅など) 東京メトロの路線が1路線以上通っており、さらに他路線(JRや都営地下鉄)が1路線以上乗り入れる駅

③3番目に大きいサイズ(汐留駅、大門駅、品川駅、三田駅など) 東京メトロの路線は通っておらず、他路線が2路線以上乗り入れる駅

④最も小さいサイズ(外苑前駅、乃木坂駅、虎ノ門駅、赤坂駅など) 1路線しか通っていない駅

かなり細かい点ですが、これらをルール化することにより全体の見やすさが考えられています。

東京メトロの路線図上では地下鉄(東京メトロと都営地下鉄)と、それ以外をわかりやすく差別化してます。たとえば山手線は白黒、山手線以外のJR線はグレーと目立つ色を使用せず、地下鉄の路線と明確に差別化がされています。東京メトロからの相互直通運転がなされている私鉄(半蔵門線から田園都市線、千代田線から小田急線、副都心線から東急東横線など)は路線が切り替わる駅から線の色が薄くなっており、相互直通運転をするという関連性は残しつつもメトロではなく他路線になるという差別化がなされています。

また、地下直結になっている駅同士(赤坂見附駅と永田町駅、有楽町駅と日比谷駅、溜池山王駅と国会議事堂前駅など)は直線で繋がっており、地上で歩いて移動ができる駅同士(秋葉原駅と岩本町駅、人形町駅と水天宮前駅、新富町駅と築地駅、JR浜松町駅と大門駅など)は点線で繋がっていることがわかります。

現在も地下鉄の運行状況や駅同士の連結の変更などに伴い、都度細かな改修が行われています。



CHAPTER #3

東京メトロと都営地下鉄 2つの地下鉄路線図の違いはなに?

私が特に好きな路線図は、東京メトロと都営地下鉄の路線図です。同じ東京の地下鉄でも東京メトロと都営地下鉄は運営母体が異なるため、路線図のデザインにも違いがあります。 下の2枚の路線図、ぱっと見全く異なるものに見えますが、実は掲載されている要素はほぼ同じものです。同じ情報が掲載されているのに並べて見ると受ける印象は大きく異なります。

東京メトロの路線図の中心は東京駅と皇居周辺になっており、東京の中心から見て路線が張り巡らされていることがよくわります。個人的に興奮した点は皇居の周りを東西線・有楽町線・千代田線・半蔵門線が重ならずに、綺麗に囲っているところです。一方、都営地下鉄の路線図は、大江戸線と大手町駅が中心になっています。また、東京メトロの路線図上で皇居は実際の形に沿っていますが、都営地下鉄の路線図上では円形にデフォルメされています。この違いはなぜなのでしょうか。

東京メトロの路線図には「より正確な位置関係がわかるように」という設計思想があり、実際の地図に沿った路線図となっています。一方、都営地下鉄は「環状線である大江戸線に乗るユーザーを増やしたい」という設計思想があり、大江戸線を目立たせ路線図の中心に配置しています。どちらもユーザーの利便性を考えての設計ではありますが、設計思想の違いによりデザインは大きく異なります。

また、東京メトロも都営地下鉄もそれぞれの該当路線を太くしてます。東京メトロは9路線と多いため、路線図上では該当路線を目立たせるよりも、他路線を細くし、差別化を図っています。



CHAPTER #4

ユーザーによりわかりやすく、シンボル化する

東京メトロ9路線と都営地下鉄4路線の計13路線は、全て異なる色とアルファベットにて分けられ、シンボル化されています。色は東京メトロと都営地下鉄でどちらも同じ色が使われています。千代田線はどちらの路線図でも緑色ですよね。

これらのシンボルは2004年の東京メトロ発足と同時期にサインシステム基準が制定され、2005 年から現行のシンボルと各駅のナンバリングが順次展開されていきました。ここで面白いと思ったことは半蔵門線に「Z」、都営三田線に「I」のイニシャルを採用したことです。はぜ半蔵門線は「H」ではないのでしょうか。

気にしたことがない方がほとんどかと思いますが、これは路線名先頭のHAN(「半」)が H (日比谷線)・A(浅草線)・N(南北線)と続いて他線と重なってしまうことによるためで、半蔵門線はZOU(「蔵」)のZから採られています。三田線も同じように、丸ノ内線が先に開通したため、「M」が丸ノ内線と重なってしまうのを避けるため、「I」を採っています。

各路線のシンボルカラーにも歴史があります。

初めて導入されたのは1970年。当時開業していた銀座線、丸ノ内線、日比谷線、東西線、千代田線の5路線と、都営浅草線、三田線の2路線を走る車両の色などを基準に、営団地下鉄(現・東京メトロ)と東京都で路線カラーが決定されました。また、1970年時点で計画中だった有楽町線と半蔵門線、南北線、都営新宿線についても、この5路線と同時に路線カラーが決定されました。副都心線は後から追加で決められました。

各路線のカラーの由来は以下の通りです。

  • 銀座線 オレンジ:ベルリンの地下鉄の色
  • 丸ノ内線 赤:丸ノ内線の建設調査でロンドンを訪れた人が吸った、イギリスのたばこの箱に使われていた色
  • 日比谷線 グレー:車体の銀色からグレーに
  • 東西線 水色:快速運転のスピード感をイメージ
  • 千代田線 緑:千代田という言葉や日本庭園をイメージ
  • 有楽町線 黄土色:オフィス街や水辺の若者を表現して金色を黄土色に
  • 半蔵門線 薄紫:ほかとかぶらず目立つ色
  • 南北線 エメラルドグリーン:沿線の日本庭園をイメージ
  • 副都心線 茶:ほかとかぶらず目立つ色

各路線のカラーリングについても色が被らないように、かつ目立つ色であるように配慮され、車体の色やその街に基づいたイメージカラーが採用されています。このようにシンボル化するということの裏には、「何線が何色で路線のイニシャルを使う」ということだけではなく、「ユーザーによりわかりやすく、使いやすく」というデザインの思想が潜んでいるのです。



CHAPTER #5

情報が整理されて見やすく! 都営地下鉄路線図のビフォーアフター

旧都営地下鉄の路線図は多くの人が見るものであるにも関わらず、複雑で見にくくなっていました。ではどのように見にくくなっているのでしょうか?1999年の路線図から、具体的な課題を洗い出してみました。

課題1 入り組んでいる路線図がそのまま表現されており、複雑な情報が複雑なままになっています。また、駅名が散らばって記載されているように見え、駅同士の位置関係が非常にわかりにくくなっています。特に皇居より右側の大手町エリアは駅が多いこともあり、路線と文字が重なりごちゃごちゃになっています。これでは目的の駅をすぐに見つけることができません。

課題2 複数路線が乗り入れている大きな駅は複数の白い長方形で表現されておりますが、駅がどこに該当するのかが非常にわかりにくくなっています。特に有楽町線・半蔵門線・南北線が通っており、赤坂見附駅とも直結している永田町駅は、位置関係を判断することが非常に困難です。路線の上に駅名が被っており、近くに寄らないと何が書いてあるかわかりません。

都営地下鉄の路線図は2000年に大江戸線の全線開通と共にリニューアルをされています。この路線図はフリーデザイナーの大西幹治氏がコンペで獲得したもの。リニューアルによって、上記の課題は解決されました。

課題1については大江戸線を環状線として表現するというデザインを取り入れ、大江戸線と大手町駅を図の中心に置くことにより、まとまって見えるようになりました。一見斬新なデザインに見えますが環状線である大江戸線を強調するなど、情報を整理することで大手町周辺の駅が集中しているエリアでも、目的の駅をすぐに見つけることができるようになりました。

課題2については駅名を枠線で囲うことにより解決しました。複数路線が乗り入れている駅に対しては何線が通っているのかを明確にわかるよう、線上をまたがるようなデザインに変更されています。また一路線しか通っていない駅については枠がついていないことも、差別化するうえで重要なルールとなっています。

このように、デザインの課題はデザインにより解決することができます。将来、現在の路線図もより使いやすいものにリニューアルされるかもしれません。



CHAPTER #6

路線図から見えるデザインのメソッド

路線図は公共交通機関に大きく関係するもので、広告でも展示物でもありません。 見る人は老若男女全てで、毎日多くの人々に目にされるものです。「どのようにすれば電車に乗る人がわかりやすく、便利に思えるか」という考えの元デザインされ、人々の生活に馴染んでいるのです。

記事に記載した内容以外にもユーザーに向けて、細かい設計がなされており都度改修され続けています。本記事では東京の地下鉄の路線図を取り上げて紹介しましたが、東京には他にも多くの路線図が存在します。それぞれの路線によって課題は異なるはずですし、他の路線図には地下鉄とはまた別の特徴があるはずです。(私は東急線と京王線が気になっています。)

皆さんも是非最寄りの駅や会社の近くの駅の路線図を見てみてください。新たな発見を見つけられるかもしれません。東京の路線図を頭に入れると街歩きもとても楽しくなりますよ!


ー REFERENCES ー

出典

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