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AIコンサルが考えるデジタルトランスフォーメーションのかたち(4回目/最終回)

ABEJAで企業のAI導入支援にかかわる佐久間隆介が、コロナを受けてデジタルトランスフォーメーションやAIの導入について解説するメディア関係者向け勉強会の4回目です。参加者からの質問への回答をまとめました。

佐久間隆介(さくま・りゅうすけ)=1979年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、アビームコンサルティング(当時デロイトトーマツコンサルティング)に入社。2014年より最年少執行役員。2019年よりABEJAに参画しグローバルビジネス展開、企業のDX支援・AI活用のプロジェクトマネジメントなどを担当。同年12月よりUse Case事業部長。


――もしAIが欠陥を見逃し、その部品が原因で事故が起きた場合に、誰が責任を負うのでしょうか?

佐久間)「事故が起きた時の責任」に関しては、議論はされています。事故の内容によりけりですが、ロボティクスに詳しい人に言わせると、ロボットがヒトに怪我をさせた場合、製造物責任が問われることもあり得るとは思いますが、AIを活用しているケースにしても全面的に業務プロセスを省人化した例は少なく、人が関わっていることが多いため、そうした責任の所在が争点になった実例がない、というのが実際です。
補足:ABEJAの倫理委員会でも論点に上がっています。今現在でいうと、やはり管理者が責任を取るべきだというのが、一般論として多くなっているようです。一方で、AI、特にディープラーニングの場合は、なぜその結果が出たのかが分からない事も多いので、本当に管理者、人間が責任を取るべきなのかは、論点として残っているようです。


――機械学習とディープラーニングは、現場でどう使い分けているのでしょうか。

佐久間)使い分けは、いろいろなパターンがあります。同じ業務領域でも手順に応じて使い分けされる事例もあります。例えばとある小売業で、約1万件の顧客データから年齢、属性、趣味などを人手で分類していたのが、もっといろんな特徴で分類が可能であるはずだと、まずディープラーニング技術を使って8個ぐらいグループがあると見当をつけました。そこから先、つまりグループに分類する特徴やルールを設計し、新しいデータが来た時にどのグループに分類すべきかは機械学習で仕分ける、比較的コストのかからない運用にしたようなケースがあります。グループ化や特徴の抽出を人手でやるのが難しい、もしくは時間がかかる部分にはディープラーニングを使い、ある程度進んだら機械学習でやろう、というかたちですね。


――メディアがDXやAIを誤解していると感じるのは、どんな時ですか?

佐久間)「誤解」と言うと失礼に聞こえてしまうかもしれませんが「AIが仕事を奪う」という言葉が一人歩きしているような記事を見ると、少し違うのではないかと思っています。

一時的に、かつ特定のグループの人にとっては現実に「奪われる」ことが確かに起きますが、人間は時間とともに、成長・変化する生き物だと思っています。学習してAIやデータのリテラシーを持つことができれば、AI開発・運用の周辺の仕事は人不足なので、変わる力さえあれば奪われたままになることはありません。

AIリテラシーとは言っても、何も、プログラミングができるようにまでなる必要はなく、このテクノロジーで何が変わるのか、業務にはどのようなインパクトがあるのかを理解できるだけでも、やれる仕事はあると思います。
人間は、ときに変化を嫌いがちな生き物だと私自身分かっているつもりです。ただ、変化自体を楽しみ、豊かさを享受してきたのも歴史の一側面だと思っています。なので、「奪う」と片づけず、AIで人間はこう変わりこう豊かになる、と理解されると嬉しいです。月並みな答えで恐縮ではありますが。


――動画のAIで実用化されているものはありますか?

佐久間)色々ありますが、特定の属性を持った動画を探し出すタスクですね。ABEJAが支援した事例では、あるスポーツ競技のダイジェスト版を作る取り組みがあります。点を取った瞬間など「エキサイティングなシーン」を学ばせて試合ごとのダイジェストを作る仕組みです。あとは実例としては他社のものですが、放送局に保存されているアーカイブデータをAIに学習させて「芸能人の誰某が映っているシーンを取ってきて」と指示して膨大な動画の中から検索をする業務を効率的にしています。


――中小企業がDXに抱く不信は、DXの導入支援をする企業が、その使い方を十分浸透させないまま、商品を売り続けたことに起因しているように思います。

佐久間)おっしゃるとおりです。実際に使ったり「運用」を行う人々のAIリテラシーやその人たちによる現実的な業務の手順を意識せずに、商売一辺倒で「とにかくこれ使ってください」「便利だから」という、表層的な価値だけを売りつける向きもあるかと思います。もちろん運用する側に十分な人材がいないなど物理的な制約もある。また、漠然と「AIはコストが高いんじゃないか」という印象もある。それら複層的な要因が背景にあると思います。
提供者として我々が襟を正さないといけないのは、モノを売りつけるのではなく、最終的にヒトが幸せになるために、企業の経営者や現場担当の目線に立って、企業としてどのような効果を目指して何が実現できるのか、使いこなせる人材をどう育てるかを支援するところだと思っています。

手前味噌ですが、ABEJAは導入して終わり、ではなく、実運用にこだわりお客様の業務プロセスに入り込んで本当に必要なAIを開発すると共に、企業内の人材育成や基本的な知識の共有・浸透も重視しています。


――企業トップがトップダウンでDX導入を呼びかけても、現場がついてこないと失敗します。企業内でDXが浸透するには、どんなプロセスを踏むべきですか?

佐久間)経営者だけがDXの意識が高い場合、管理者・ミドルマネジメント層に理解いただくような手はずを取るべきです。

私が見聞きしているだけの範囲ですが、実際は経営者だけではなくて、例えばIT関連のキャリアがあり、最先端テクノロジーを研究されている方は、大企業であれば一定程度いらっしゃる。そういったキーマンを見つけ、巻き込むこともお手伝いさせていただいてます。

ありがたいことに、経営層とのつながりも結構あります。なので、経営層に「ぜひ実現したい」と言っていただく一方で、現場の担当レベルの方が実務的にどんな問題がありどこにAIを活用するといいのか見つけていただく必要もある。

いくら経営者が「使うぞ」と言っても、子細に業務オペレーションの実態が分かっていないと、お話ししたようなAIの難しさは乗り越えられません。
ABEJAでは現場のキーマンと一緒に、かつ経営者のバックアップもいただき、経営課題に関わる領域で、一番いい形でテクノロジーを使えるところはどこか一緒に探索するフェーズをご一緒することが多いです。

AIでできる範囲を理解し助言・支援ができるABEJAの社員と、よく現場業務を理解している方とのコンビネーションがいいと上手くいく傾向があります。

あとはそうした取り組みを始めるにあたり、啓発的なワークショップ・プログラムを開催するのも進めやすい方法です。結構引き合いもあります。


――日本に限らず、メディアでAIをうまく使っている例をご存じですか?

佐久間)少し前ですが、民放やインターネットテレビの方々と話をしていて、スポーツ番組で「どこの所属の選手か」というのを顔画像から所属と氏名を判定してテロップを自動的に出すという取り組みは上手だなと思いましたね。ニュース系のメディアでいうと、ニュースサイトの読者向けに、「このユーザーにはこのニュースを配信するのがより読んでもらえる」というレコメンデーションシステムは活用されてきているし、ニーズも結構高まっている印象があります。


ーーコロナ前後で顧客の要望に変化はありますか?

佐久間)弊社の顧客でも、明らかに変わっています。例えば、先ほど申し上げた、レコメンデーション技術の要望が増えてきました。あとは投稿サイトやポータルサイトでユーザーからの不適切発言がないかAIにチェックしてもらう技術も要望がありました。他にも、オンラインの会議をAIが記録・要約できないかというご要望をいただいています。

「コロナ前」はどちらかと言うと、フィジカルなデータを小売、製造、インフラの各企業からいただいていることが多かったのが、現在はどちらかというとオンライン側で、元々データをすでに多く貯めていらっしゃるメディア
やECコンテンツの企業からのご相談が活発という印象はあります。


――AIの正確性に対する期待が大きく、結局使えないと判断されることがあります。これは、日本企業が限りなくエラーをなくすという姿勢だからでしょうか?まだそこまで人手不足が切羽詰まっていないからでしょうか?お考えを聞かせてください。

佐久間)一般企業向けのセミナーでお話しているのがまさにこの質問の答えです。完璧を目指しすぎている面もありますが、私としては、業務変革した際、一時的に上がったコストを時間をかけて徐々に下げる設計にしていないことが多く、AIを導入した瞬間に「これぐらい削減できるんだろう」と水準以上の期待を寄せてしまうことが多いと感じています。

業務をいわゆるBPO化(アウトソーシング)する余地もあります。すでにBPO化していても、安く簡単にやれる業務に改革していくこともできる。その分、AIに判断させる部分を徐々に増やしていく、という考え方になっています。

すぐに効果が出るものではないですが、少しずつ業務コストを下げながら、最終的に、人間が関わるところを最小限にしていく。その段階までには、それなりの投資は要るかもしれないがAIの精度は上がっていきます。長い目で見ていくことにはなりますが、実は結構高い削減効果が期待できます。将来の何千万円、何億円という、先の節減効果に手を打っておく中長期施策としてのAIとしてとらえていただくほうがいいと考えます。

これが通用するのは、もちろん業務の種類によります。要は、いきなり完璧を目指さないことと、せっかく作るのであれば自社固有のデータを使って自社なりの価値が出せる領域の見当をつけておくこと、が重要です。


――自動車メーカーはカイゼン活動が競争力につながっていると思います。AI化によってカイゼン活動はどうなっていくと思いますか?

佐久間)製造業では熟練工の高齢化でそのノウハウが失われるから、デジタル化するべきだという風潮が見受けられます。その流れは否定はしませんが、正直それをすべきかは企業によると思います。

ヒューマンタッチがあるからこそいい部分もあれば、本当に機械化して人間のキツイ・汚いといった不幸な部分を消すが大事と思われたのならぜひ自動化されて欲しいと思います。この選択次第でどれぐらいカイゼン活動的なものが自動化されていくのか変わるだろうと感じています。

選択の結果、より人間がやったほうがいいとなれば人間の手でカイゼン活動がすすむでしょう。キツい仕事に関しては、基本的には機械がカイゼンをする。ただ機械をメンテする人はどうしても必要なので、AIやロボットのエンジニアは増えるだろうと思います。

以上シンプルな回答で恐縮ですが、そんな形に分化していくのではないか、と思っています。


――コロナの影響でDXが進むという印象を受けましたが、逆に資金繰りの悪化で、DXの導入が遅れる懸念はありませんか?

佐久間)おっしゃるとおりです。手元にどれだけキャッシュがあるかは重要です。キャッシュに乏しい企業や手元にキャッシュを多く残さない業種、運転資金を回し続けて経営が成り立っている企業は投資の余力がないことが多いのが実情だと思います。

弊社の場合はオンライン型のサービスや、コンテンツの提供企業、あとは、メーカーの中でも医療、製薬関連の企業などで「今こそ逆に投資時だ」とお考えの企業と導入のお話を進めています。お客様によってはまだ初期段階の企業もいらっしゃいます。

社会全体としては少しずつでも幸せな方向に向かっていただきたい。最初から高額な投資は必ずしも必要はなく、前のご質問への回答のように、長期的にどのような価値を訴求するのか、そしてそれにデジタルが不可欠なのであれば少しずつでも取り組むべきです。

企業によって様々な形のDXがあっていいですし、この連載で語らせていただいた真のDXを起こす気概のある企業が有る限り、運用面を強みにした日本らしいDXで巻き返すことができるのではないかと夢想しています。

(終わり)
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(2020年月日掲載の「テクプレたちの日常 by ABEJA」より転載)

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