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国立大卒 舞台業界で働いていた私が、十四春に転職して感じたこと

初めまして!株式会社としはるの正社員、服部蒼と申します。十四春旅館という築110年になる町屋で、主に仲居業をしております。

一昨年10月に法人化した弊社ですが、正社員は今も私一人のため、自ずとこういった記事を書くのも私の担当と相成りました。本来は従業員のプロフィール紹介を連載したかったのですが、思いついて3秒で断念した次第であります。

今回は、これまで全く宿泊業に携わったことのなかった私が、どういった経緯で弊社に就職したのか、そして一年間働く中で何を感じ考えたかを共有したいと思います。


~転職のきっかけ~

まずざっくりと自己紹介させていただきますと、生まれも育ちも、京都はヤンキーの聖地、伏見でございます。高校卒業まで京都で過ごしました。

大学進学を機に関東へ移住し、卒業後も一年間東京で働いておりました。

専攻は経済学だったのですが、かねてよりこよなく愛していた舞台芸術に惹かれ、在学中は一年間ヨーロッパでの留学も経験し、満を持して舞台業界に就職いたしました。

いったい舞台芸術の何にそれほど魅了されていたのかと申しますと、ヨーロッパで目にした、芸術が人々の生活の一部となっている光景が忘れられなかったからです。劇場が街の中心的存在となり、その地域のアイデンティティ形成に寄与し、人々は劇場に集うことで相互交流を深め、文化に触れ、また街と繋がっていました。

「こんな劇場を日本にも作りたい!!」と、劇場という”ハコ”にとてつもなく大きな可能性を感じていたのです。

はてさて、こんな”舞台芸術に取り憑かれた人間”だった私ですが、一年間かけて準備し、思いの丈をぶつけたニューヨークの大学院入試に失敗します。これが、地元京都に戻ろうと思った直接的な理由です。「今の実力では何もできることはない」「必要とされていない」と、まるでレ・ミゼラブルの「夢やぶれて」状態だったわけですが、とりあえず働こうと登録したここWantedlyで、弊社の募集をタイミングよく見つけました。

面接の際には、すでに次の舞台の仕事も決まっていたのでアルバイト希望だったのですが、社長に「ぜひ正社員で」と言っていただき、入社に至りました。


~今までの経験との繋がり~

再三申しているように、これまで宿泊業に従事した経験は皆無だったのですが、学生時代に留学して異文化に触れていたこと、15カ国旅するくらいには世界を回るのが好きなことなど、あとから思えば「向いていたのかもしれない」と思えるほど楽しく仕事をしてきました。

9割が海外からのお客様ですので、毎日英語を使う環境に身を置けたのも、私にとっては非常に大きなプラスポイントでした。毎日違うお客様をお出迎えし、その日あったできことを共有したり京都の街を説明したりすることは純粋に愉しいですし、訪れたことのある街出身の方がいらっしゃったときには、お互い嬉しくなります。

自らの文化や習慣に当てはめてこうあるべきだ、という色眼鏡をかけて見る癖がなかったのも、どんなお客様とも笑顔でお話しできる一つの要因だったかもしれません。

そして何より、"ハコ”が内包する可能性を、劇場ではなくなったけれども、旅館/ホテルという”新たなハコ”に見出したことが大きかったでしょう。

どんな"ハコ"も、何を伝えたいか、どういった経験をしてほしいか、そしてどのような人に来てほしいかを考えることから始まります。私もこの一年、お客様に何を提供したいかを常に考えてまいりました。

「できるだけ心地よく滞在してもらいたい」

「ホンモノの京都を知っていただきたい」

「ここでしかできない経験をしてもらいたい」

想いはいくらでも出てきますが、サービスには正解がありません。一人ひとりの趣味嗜好や求めることが違う分、これをしておけば大丈夫、などという"正解”にはどれほど頑張っても辿り着けません。

その中で私が見つけたこと。それは、

『訪れたお客様に、その土地(京都)に息づく文化と人々の暮らしが紡ぎ出すストーリーを体験してもらうこと。』

これが、1つのテーマだと捉えています。

110年という歴史を培ってきたこの建物だからこそ伝えることのできるストーリーを、私たちの接客を通して感じていただく。地域で暮らす人々との出会いや風土、文化、伝統との出会い。そうした繋がりを創出できる場所がこの”ハコ”であると感じたのです。

様々なものが行き交い、遭遇するブラックボックスには、新たなものが生まれる可能性が無限に秘められていると信じています。十四春旅館に訪れた人々が、"良き出会い”を果たしてくださることを願ってやみません。


~新たな発見、視野の広がり~

十四春に勤めてもった新しい視点、それはお茶やお着物など日本の伝統的な文化を愛でる心です。お茶は、お客様のご到着時にお抹茶を点ててお出しするため、弊社に就職してから習い始めました。何度かお茶会にもお邪魔させていただき、「こんな風流なお遊びを私なんぞがしていて良いのか…」といささか疑問に思いながらも、美しいお点前と、常に相手に敬意を払って思いやる姿勢、趣向を凝らした間のしつらえやあの空間に流れる優美かつ緊張感のある空気には、いつも感服します。

お着物も毎日自分で着ていますが、季節に合わせて帯を変えたりすることで、お部屋のお軸やお花とともに、日本の四季や独自の節句を楽しんでいただければと思っております。

旅館が1つのコンセプトを体現する空間だとすれば、その世界観を生み、伝えていくのは他でもない従業員。社長がどの方向に向かっているのかを嗅ぎ取って自分の中に落とし込んでいくことが、その世界観を創り出す第一歩だと思っています。

社長と一緒にお茶会に参加したり、季節の味覚に舌鼓を打ったりすることで、言葉だけでは伝えきれない世界観のメッセージを共有しております。

かくいう私も、つい一年前までは玄関のお軸や生け花にも目も止めませんでした。社員として多くの時間を過ごす中で、自然と身についた視点だと思っております。こうして得た、伝統文化を愛し愉しむ姿勢や、相手を敬ったおもてなしの心得は、今後一生の財産です。


つらつらと書いてまいりましたが、できるだけ多くの方に、十四春旅館で働くイメージを持っていただきたいと思っております!次回は仲居業についての詳細をお話しする予定です。

ご精読ありがとうございました!

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